夫婦でNISAを活用して資産形成を進める中で、「もしパートナーに万が一のことがあったら、NISA口座はどうなるのだろう」と気になったことはないでしょうか。考えたくないテーマかもしれませんが、事前に知っておくことで、いざという時に慌てず対応できます。この記事では、NISA口座の相続に関する制度の仕組みと手続き、そして今のうちに夫婦でできる準備について解説します。
NISA口座は相続されるか?(制度の基本)
NISA口座の相続について、まず3つの基本ポイントを押さえましょう。
- NISA口座は名義人の死亡時に廃止される: NISA口座は「1人1口座」の制度であり、名義人が亡くなった時点で口座自体が廃止されます
- 保有資産は相続財産として引き継がれる: 口座は廃止されますが、中に入っている投資信託や株式は消えません。相続財産として相続人に引き継がれます
- 非課税のまま相続はできない: NISA口座の「非課税」という特典は、口座廃止とともに終了します。相続人が引き継いだ資産は、通常の課税口座(特定口座など)で管理されます
つまり、NISA口座そのものは相続されませんが、中の資産は相続されるということです。「NISAで積み立てた資産が消えてしまう」ことはありませんのでご安心ください。
配偶者が亡くなった場合のNISA口座の手続き
パートナーが亡くなった場合、NISA口座に関して必要な手続きは以下の4ステップです。
ステップ1: 死亡診断書の取得
医療機関から死亡診断書を受け取ります。この書類は各種手続きの基本となるため、複数部のコピーを取っておきましょう。
ステップ2: 証券会社への連絡
故人が口座を持っていた証券会社に連絡します。「口座名義人が亡くなった」旨を伝えると、相続手続きの案内書類が送付されます。SBI証券・楽天証券などのネット証券は電話窓口で対応しています。
ステップ3: 相続手続き書類の提出
証券会社から届いた書類に必要事項を記入し、添付書類とともに提出します。
ステップ4: 資産の移管または売却
手続き完了後、故人のNISA口座内の資産は相続人の特定口座に移管されるか、売却して現金化されます。
手続き期間は概ね1〜3か月が目安です。書類の不備があると追加で時間がかかるため、必要書類を事前に確認しておくことが大切です。
非課税扱いはどうなるか(相続時の課税関係)
NISA口座の相続時の課税関係は少し複雑です。整理して確認しましょう。
| 項目 | NISA口座 | 特定口座 | 預金 |
|---|---|---|---|
| 相続財産の評価額 | 死亡日の時価 | 死亡日の時価 | 残高そのまま |
| 未実現利益への課税 | 非課税(取得価額がリセット) | 非課税(取得価額がリセット) | ― |
| 相続後の運用益 | 課税(特定口座に移管) | 課税 | 利子に課税 |
| 相続税 | 基礎控除超過分に課税 | 基礎控除超過分に課税 | 基礎控除超過分に課税 |
ポイントは、死亡日時点の時価が新たな取得価額になることです。例えば、100万円で購入した投資信託が死亡日に150万円になっていた場合、相続人にとっての取得価額は150万円です。その後160万円で売却しても、課税されるのは10万円分の利益のみになります。
相続税については、相続財産全体が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下であれば課税されません。配偶者が相続する場合は「配偶者の税額軽減」により、さらに大きな控除が受けられます。
※相続税の計算は個々の状況により異なります。具体的な税額については税理士にご相談ください。
手続きの流れと必要書類
相続手続きに必要な書類をチェックリスト形式で整理します。
| 書類名 | 取得先 | 取得にかかる目安 |
|---|---|---|
| 死亡診断書(コピー) | 医療機関 | 即日 |
| 戸籍謄本(故人の出生から死亡まで) | 市区町村役場 | 1〜2週間 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 市区町村役場 | 1〜2週間 |
| 遺産分割協議書 | 相続人間で作成 | 合意次第 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 市区町村役場 | 即日〜数日 |
| 相続届出書(証券会社所定の書類) | 証券会社から送付 | 連絡後1〜2週間 |
遺言書がある場合は、遺産分割協議書の代わりに遺言書(検認済みのもの、または公正証書遺言)を提出します。遺言書があれば手続きが大幅にスムーズになるため、事前の準備が重要です。
証券会社によって必要書類や手続き方法が異なる場合があります。まずは証券会社の相続専用窓口に連絡し、正確な案内を受けてください。
事前に夫婦で準備しておくべきこと
万が一に備えて、元気なうちに夫婦で以下の準備をしておくことをおすすめします。
- 証券口座の情報を共有する: 証券会社名・口座番号・ログインID。パスワードそのものでなくても、「どこに口座があるか」だけで手続きは大きく楽になります
- エンディングノートに金融資産を記載する: 証券口座・銀行口座・保険など金融資産の一覧を書き出しておく。市販のエンディングノートでも、ノートアプリでもOK
- 遺言書の作成を検討する: 資産額が大きい場合や相続人が複数いる場合は、公正証書遺言の作成を検討。遺産分割協議が不要になり、手続き期間を大幅に短縮できます
- 配偶者自身のNISA口座を持つ: パートナーのNISA口座は相続で非課税枠を失います。夫婦それぞれがNISA口座を持つことで、片方の口座が廃止されても、もう片方の非課税運用は継続できます
- 年に1回、資産状況を夫婦で確認する: 年末や誕生日など、決まったタイミングで資産の棚卸しを夫婦で行う習慣を作りましょう
こうした準備は「万が一」への備えであると同時に、夫婦で資産形成の方向性を確認し合う良い機会にもなります。日常的に投資の話をするきっかけにもなるため、ぜひ前向きに取り組んでみてください。
なお、相続手続きは証券会社によって細部が異なる場合があります。不明な点がある場合は、各証券会社の相続専用ダイヤルや、お近くの税理士・ファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。
まとめ
NISA口座の相続について、覚えておきたいポイントを整理します。
- NISA口座は名義人の死亡時に廃止されるが、中の資産は相続財産として引き継がれる
- 非課税の特典は口座廃止とともに終了し、相続後は通常の課税口座で管理される
- 手続きには戸籍謄本・遺産分割協議書などが必要で、1〜3か月かかる
- 事前に証券口座の情報共有・エンディングノートの作成をしておくことで、いざという時の負担が大幅に軽くなる
「出口戦略の完全ガイド」や「夫婦NISA完全ガイドはこちら」もあわせてご覧ください。